坂の上の雲

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)


全8巻読了。竜馬がゆくを読んで、次に読み出したのがこれ。時代も幕末から明治に続いているので、続けて読んだのは正解だったと思う。ただ、竜馬がゆくも全8巻なので、相当な時間がかかっているが。
今NHKでこの小説のドラマ撮影をやっているせいもあって、この前ちょっとした特集をやっていたのだが、司馬遼太郎記念館の館長さんの話が印象的だった。司馬さんが歴史小説を書くようになったそもそものきっかけが太平洋戦争への参戦にあったとのこと。その時軍人の愚かさを目にし、日本人は一体いつからこんな風になってしまったのか、なぜこのような戦争を始めてしまったのか、ということを強烈に思ったという。自分の作品は、そのときの自分への手紙のようなものだ、とおっしゃっていたそうだ。そういうルーツがあることを知ると、明治を描いた本書が司馬作品の中でも特に重要な位置を占めるのではないかと考えられる。
・・・とはいえ自分自身は幕末が好きで、「燃えよ剣」「人斬り以蔵」などを好んで読んでいたため、他の時代のものはあまり読んでおらず実際のところどうなのかはよく分からないが、まぁそう外れては無いと思う。幕末が好きなのは、若者が革命を起こすというエネルギーに魅力を感じたからで、これは小学六年生のときに日本史で習って以来ずっと好きなのだ。しかし坂の上の雲を読んでみると、「明治」という時代は幕末以上に魅力的かもしれないと感じた。
タイトルにもあるように、坂を上るだけではなく、その上に浮かぶ雲を目指していたというくらい、明治の人たちは背伸びをして生きていたと思う。そこには日露戦争に代表される諸外国からの圧力・国家存亡の危機感が多分にあったことが原因していると考えられるが、一方では文明開化という新しいものに囲まれた刺激や正岡子規がやったように文化・学問の分野でその道の権威になれるというような時代の面白さもあった。人々が背伸びをしながら一生懸命生きた明治はやはりエネルギーで溢れている。
本書はそんな時代の空気を感じることの出来る絶好の読み物だと感じた。


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それにしても秋山好古・真之兄弟の顔は日本人離れしている。