苔のむすまで

苔のむすまで

苔のむすまで


自分の読みたい本リストに入れていたこの本をようやく読んだ。といっても何故読みたい本リストに入れたのかも忘れてしまうほど時間が経ってしまっていた。読む前はこの人誰だろうとか思ってみたり。オイオイ。けど読んで分かった、直島の家プロジェクトで護王神社を設計した人だった。多分それで入れておいたんだと思う。
一見すると色んなテーマで好き放題書かれているように見える。でもばらばらじゃない。それらを1つの作品たらしめているのは根底にある著者の美に対する想いのように感じた。著者の美意識が感じられる部分を引用してみよう。

私にとって、本当に美しいと思えるものは、時間に耐えてあるものである。
時間、その容赦なく押し寄せてくる腐食の力、全てを土に返そうとする意志。それに耐えて生き残った形と色。(中略)
それらのあらゆる災難を生き延びながら、永遠の時間の海を渡っていくのだ。(中略)
時間に磨かれたものは当初持っていた媚や主張、極彩色や誇張をそぎとられ、まるで、あたかも昔からそこにその様にあったかのような美しいものになるのである。

というわけで、洋の東西を問わず結構歴史的な話題が多く、そこがまた私のツボだったり。
そういえば、松岡正剛さんの本を何冊か読んだが、美に対する意識は似ているものを感じた。